とやまの獅子舞
富山県には全国屈指の数の獅子舞が継承されており、各地の集落ごとに形は様々で、地域色が豊かな民俗芸能である。
獅子舞とは
獅子舞は、ライオンを象った獅子頭に、唐獅子文様を大きく描いた胴幕(かや)を付けて舞う民俗芸能である。インドを起源にもつとされ、日本には飛鳥時代に朝鮮半島の百済(くだら)から伝来し、寺社の様々な行事の祓いの舞として日本に受け入れられたとされる。現在のように日本各地に広まったのは、室町時代から江戸時代初期にかけて伊勢太神楽の獅子舞が全国を行脚したことがきっかけと考えられている。
富山県の獅子舞は、主に春祭りや秋祭りで演じられる。春には豊作を祈って賑やかな獅子が集落を廻り、秋には五穀豊穣に感謝して、華やかな衣装を纏った踊り子とともに大きな獅子が繰り出す。さらに、富山県には活動中の獅子舞だけでも約850件継承されており、全国屈指の数を誇っている。さらに、多様な種類が伝承されていることも特徴で、特に舞い踊る芸能獅子舞と、古い形を留める行道獅子の両方が残っている点もポイントである。
富山県の獅子舞
獅子舞は、百足獅子、二人立ち獅子、行道獅子の大きく3つに分けられる。百足獅子と二人立ち獅子は祭礼で舞を披露するが、行道獅子は舞わず祭礼の先導役を務める。その広がりは、大まかに県西部の「百足獅子」と、県東部の「二人立ち獅子」に分けることができる。
百足獅子
胴幕の中へ大人数が入ることから「百足獅子」と呼ばれる。県西部に多く見られ、隣接する加賀や能登の獅子舞も百足獅子である。越中と加賀・能登の獅子舞は互いに影響を受けながら、各地で独自の発展を遂げ、現在まで引き継がれた。富山の百足獅子は大きく氷見獅子・砺波獅子・射水獅子に分けられる。
・氷見獅子
・砺波獅子
・射水獅子
二人立ち獅子
前足と後足の2人が入ることから「二人立ち獅子」と呼ばれる。県東部の多く見られる。二人立獅子は伊勢太神楽の影響を受けており、金蔵獅子・下新川獅子に分けられる。金蔵獅子は獅子あやしとして登場する金蔵という男神の名をとったもので、飛騨から伝わったとされ、下新川獅子は越後から伝わったとされている。
・金蔵獅子
・下新川獅子
行道獅子
「行道獅子」は舞わずに祭事行列(行道)で先導を務める獅子である。百足獅子・二人立ち獅子が江戸時代に成立したのに対し、行道獅子は中世の古い形を留めていると考えられている。県指定無形民俗文化財「小川寺の獅子舞」(魚津市)は獅子、天狗、ババメン、アネマで編成され、神輿の行列を先導しながら観音堂を7回半まわる。神仏習合の古い形を残す獅子舞で、行道獅子の典型である。
また、江戸時代以降の獅子舞が立方体の形をした獅子頭であるのに対し、行道獅子は「箱獅子」と呼ばれる平たい直方体の形をした獅子頭を用いる。県内で最も古い記年銘がある獅子頭は、柴野社に伝わる県指定有形文化財「木造獅子頭」(富山市八尾町)で、文明13年(1481)銘を持っている。