とやまの自然
富山県には、3,000m級の立山連峰を中心とした北アルプスの峰々から、水深1,000mをこえる富山湾に至るまで、高低差4,000mのダイナミックで変化に富んだ地形がある。そこには、四季折々で美しい変化を見せる、豊かな自然に恵まれ、様々な動植物も生息している。これら多くが、文化財に指定され、富山県の自然の特色をうかがうことができる。
とやまの自然の特徴
火山
プレートの働きによって標高3,000mの山脈となった立山は、日本有数の活火山でもある。かつての火口であった「みくりが池」や、今も噴気をあげている「地獄谷」などの火山に由来する景観は、古来、地獄や極楽に見立てられるなど、富山県の歴史や文化に大きな影響を与えている。
氷河
平成24年(2012)、立山連峰にある3つの雪渓が「氷河」に認定された。日本で初めて現存する氷河の発見であるが、かつて日本で初めて氷河の痕跡が見つかったのも立山だった。雄山西斜面や薬師岳で見られる圏谷(カール)は、地面をスプーンですくったような地形で、この地に氷河が発達していたことを示している。
峡谷・瀑布
富山県には、激しい地殻変動で生まれた北アルプスの山々を源とする急流河川が数多くある。それら河川は大地を浸食し、上流ではその壮大さを峡谷や瀑布となってみることができる。近代に至るまで人の手が入らなかった断崖絶壁のV字谷である「黒部峡谷」や、立山の雪解け水を源流に持ち、落差350mと日本一を誇る大瀑布「称名滝」は、富山県を代表する自然景観である。
地層・断層
富山県の地質構造は、古生代以前に堆積した飛騨変成岩と呼ばれる固い岩石をベースとして、現在に至るまでの間の各時代に、地層が堆積した時の環境や、その後の地殻変動で複雑に変化して生み出されたものである。隆起や傾動といった地殻変動の痕跡である「褶曲」や「断層」のほか、特異な「整合・不整合」の露頭などが文化財となっており、その複雑な地質構造を見ることができる。
海浜・島嶼
富山県の海岸部はかつて砂丘や潟湖が広がっていたが、その多くは姿を消した。開発が及ばなかったところには今もなお特徴的な自然景観が残っている。県東部の沿岸には湧水地帯が広がり、地下水によって保存された埋没林や海底林が見つかっている。県西部には島や岩礁が点在し、富山湾一帯を指す枕詞である「有磯海(荒磯海)」を象徴する景観が見ることができるほか、海浜植物やウミウシをはじめとした海の動植物の宝庫である。
動物
富山県の自然植生の割合は本州で最も高く、人の手が入った里山の割合も全国平均よりも高い。それらの森林には、多くの野生動物が生息している。標高2,000mを超える高山地帯に生息するライチョウや、生息地周辺での稲作のおかげで生き残ったイタセンパラのような絶滅の恐れがある珍しい動物のほか、カモシカやホタルイカが集まる海面も文化財になっている。
植物
巨樹・巨木をはじめとして、樹叢や植物の生息地など多種多様な植物が文化財となっている。巨樹・巨木には人とともに歩んできたものが多く、様々な言い伝えや伝説が残っている。また、樹叢には北方系と南方系の植物が混生する、高山には氷河期の生き残りとされる植物群落が見られるなど、この地の環境を反映したものも多い。
代表する文化遺産
火山
称名滝とその流域(立山町、県史跡・名勝・天然記念物)
氷河
立山の山崎圏谷(立山町、国天然記念物)
地層・断層
猪谷の背斜・向斜(富山市、国天然記念物)
横山楡原衝上断層(富山市、国天然記念物)
峡谷・瀑布
黒部峡谷附猿飛並びに奥鐘山(黒部市・立山町、国特別名勝特別天然記念物)
称名滝(立山町、国名勝天然記念物)
海浜・島嶼
魚津埋没林(魚津市、国特別天然記念物)
虻が島とその周辺(氷見市、県名勝・天然記念物)
植物
杉沢の沢スギ(入善町、国天然記念物)
上日寺のイチョウ(氷見市、国天然記念物)